079:砂
ご主人様が風邪をひいたので、ペットは懸命に看病しなければなりません。
風邪をひいた時に必要なもの?
それは勿論。
暖かいご飯と
暖かいベッドと
数日分の苦いお薬に
甘い甘い看病でしょう。
079:砂
(きみはペット)
ちゃんと眠ってるかしら、本なんか読んでたりしないかしら。心配しながらコルトは片手で何とか扉を開ける。
「ディオー、お粥作ったけど……っみゃー!!」
危うく盆を落っことしそうになって、慌ててコルトは両手で盆をしっかり持つ。てっきりベッドの上に居るだろうと思っていた飼い主は、きっちり起き上がり服を着替えていた。
「あ、コル」
「っわ、わ、わわっ」
「何だっけ、お粥だっけ? さんきゅ」
言いつつトレーナーを着てベッドに潜り込む。まあそりゃ、洗濯もしますし。夜はその……まあ、見ることありますし。でもなんだか恥ずかしい。とは言ってもディオが恥ずかしがったらそれはそれで気持ち悪い(そんなキャラじゃないし)。
「えっと、あんかけにしてみたの。こういうの嫌い?」
「いや、平気平気。いっつも風邪ひいたら寝込んでるだけだったから、なんか料理作って貰えるなんてすげー待遇良すぎ」
「何言ってるの、貴方はご主人様ですよ。大事なご主人様が辛い時にはあたしの出番です」
そういうきわどい台詞を吐かれると少し困る。さらりと彼女は言ってのけ、小皿に粥を取る。
「はい、どうぞ」
にっこり。
「……………………」
「…………どうしたの? ディオ」
「…………え、いや」
れんげの上にお粥。差し出す彼女が不思議そうに首を傾げた。
(どういう待遇なんだよマジでッ…………!!)
思わず目を手のひらで覆って顔を背けたくなった。何なんだ。何なんだこの展開。俺は熱でついに天国を見てるんですか?
「あ、そっか。あんかけは熱いよね、ちょっと待って」
コルトはかちゃかちゃと小皿の中で粥を掻き混ぜ、掬って息で冷ます。ああまた勘違いしてるこいつ。
「はい、あーん」
うっわあ、俺マジで天国に足踏み入れた!?
「…………どう? 美味しい?」
「……うまい」
「良かった。お粥って作ったことなかったの」
何だろうこれ。何だろう。……風邪をひいた時ってもっと辛いのに。なのに全然辛くない。
「あとはお薬、これ」
「え、粉薬嫌い」
「何言ってるのよ、薬箱の中全部探したけど、風邪薬はこれしかなかったわ。後で錠剤買ってくるから、今はこれで我慢して」
それは確か前に錠剤の薬を買った時に試しについてきたもので、でも粉は嫌いだから残ってしまって、そうしているうちに錠剤まで切れた。粉薬は嫌いだ。砂を飲んだようにざらざらして。
「これ……カルピスとかで薄めたらマシになるかな」
「そうなの? でも残念,カルピスはないわ」
「……あれ何だっけ,ほら、子供用のゼリーの……」
「それを買いに行くくらいなら、錠剤買ってくるわよ。大丈夫、一瞬だから、ほら、頑張って頑張って!」
粉薬を開けてコップを渡してきた。さっきまで天使だったのに、今は天使の顔をした悪魔だ。鬼だ。
「……口移しで飲ませてくれたら頑張って飲むんだけどなー……」
「はいはい、冗談は良いからさっさと飲んで」
全く冗談じゃなかったのに。くそ、お前は良いよな、飲めるから。俺は粉薬がほんとに嫌いなんだぞ。粉薬なんてこの世から消えちまえ。
観念して粉薬を口の中に突っ込んで、水で一気に流し込む。舌や歯茎に粉が残って、じわりと口の中にその味を残した。だから粉薬は嫌いだ。
「―――ッ、苦…………」
「ディオ、偉い偉い! じゃあ後はゆっくり眠っててね」
強引にベッドに押しつけて掛布を被せ、コルトは満足そうにベッドの脇にぺたりと座った。
「……お前何してんの?」
「ディオが眠れるまで此処に居るね。だって病気の時一人で居ると、淋しいでしょ?」
くす,とコルトは笑い、そして何かに気付いたような顔をした。手をベッドにかけるとスプリングが微かに軋んだ。ゆっくり柔らかい唇が重なる。すぐに離れたがそれでも間近で彼女は自らの唇を舐めて(その仕草の何と艶めかしいこと)顔を顰めてから笑った。
「にがいね」
唇に白い粉がついていた。
「プレジャーパウダー」加筆修正版。
きみはペットの設定は現代。ディオがご主人様でコルトがペットです。もろくそパロディです。
私が粉薬の中で一番苦いと思ったのは、市販の胃薬。あれ程嫌なモノはなかった、もう二度と飲まない、と誓った一年前。
きっとディオもそんな気持ちだな、とか思って書いた気がする。
風邪をひいた時に必要なもの?
それは勿論。
暖かいご飯と
暖かいベッドと
数日分の苦いお薬に
甘い甘い看病でしょう。
079:砂
(きみはペット)
ちゃんと眠ってるかしら、本なんか読んでたりしないかしら。心配しながらコルトは片手で何とか扉を開ける。
「ディオー、お粥作ったけど……っみゃー!!」
危うく盆を落っことしそうになって、慌ててコルトは両手で盆をしっかり持つ。てっきりベッドの上に居るだろうと思っていた飼い主は、きっちり起き上がり服を着替えていた。
「あ、コル」
「っわ、わ、わわっ」
「何だっけ、お粥だっけ? さんきゅ」
言いつつトレーナーを着てベッドに潜り込む。まあそりゃ、洗濯もしますし。夜はその……まあ、見ることありますし。でもなんだか恥ずかしい。とは言ってもディオが恥ずかしがったらそれはそれで気持ち悪い(そんなキャラじゃないし)。
「えっと、あんかけにしてみたの。こういうの嫌い?」
「いや、平気平気。いっつも風邪ひいたら寝込んでるだけだったから、なんか料理作って貰えるなんてすげー待遇良すぎ」
「何言ってるの、貴方はご主人様ですよ。大事なご主人様が辛い時にはあたしの出番です」
そういうきわどい台詞を吐かれると少し困る。さらりと彼女は言ってのけ、小皿に粥を取る。
「はい、どうぞ」
にっこり。
「……………………」
「…………どうしたの? ディオ」
「…………え、いや」
れんげの上にお粥。差し出す彼女が不思議そうに首を傾げた。
(どういう待遇なんだよマジでッ…………!!)
思わず目を手のひらで覆って顔を背けたくなった。何なんだ。何なんだこの展開。俺は熱でついに天国を見てるんですか?
「あ、そっか。あんかけは熱いよね、ちょっと待って」
コルトはかちゃかちゃと小皿の中で粥を掻き混ぜ、掬って息で冷ます。ああまた勘違いしてるこいつ。
「はい、あーん」
うっわあ、俺マジで天国に足踏み入れた!?
「…………どう? 美味しい?」
「……うまい」
「良かった。お粥って作ったことなかったの」
何だろうこれ。何だろう。……風邪をひいた時ってもっと辛いのに。なのに全然辛くない。
「あとはお薬、これ」
「え、粉薬嫌い」
「何言ってるのよ、薬箱の中全部探したけど、風邪薬はこれしかなかったわ。後で錠剤買ってくるから、今はこれで我慢して」
それは確か前に錠剤の薬を買った時に試しについてきたもので、でも粉は嫌いだから残ってしまって、そうしているうちに錠剤まで切れた。粉薬は嫌いだ。砂を飲んだようにざらざらして。
「これ……カルピスとかで薄めたらマシになるかな」
「そうなの? でも残念,カルピスはないわ」
「……あれ何だっけ,ほら、子供用のゼリーの……」
「それを買いに行くくらいなら、錠剤買ってくるわよ。大丈夫、一瞬だから、ほら、頑張って頑張って!」
粉薬を開けてコップを渡してきた。さっきまで天使だったのに、今は天使の顔をした悪魔だ。鬼だ。
「……口移しで飲ませてくれたら頑張って飲むんだけどなー……」
「はいはい、冗談は良いからさっさと飲んで」
全く冗談じゃなかったのに。くそ、お前は良いよな、飲めるから。俺は粉薬がほんとに嫌いなんだぞ。粉薬なんてこの世から消えちまえ。
観念して粉薬を口の中に突っ込んで、水で一気に流し込む。舌や歯茎に粉が残って、じわりと口の中にその味を残した。だから粉薬は嫌いだ。
「―――ッ、苦…………」
「ディオ、偉い偉い! じゃあ後はゆっくり眠っててね」
強引にベッドに押しつけて掛布を被せ、コルトは満足そうにベッドの脇にぺたりと座った。
「……お前何してんの?」
「ディオが眠れるまで此処に居るね。だって病気の時一人で居ると、淋しいでしょ?」
くす,とコルトは笑い、そして何かに気付いたような顔をした。手をベッドにかけるとスプリングが微かに軋んだ。ゆっくり柔らかい唇が重なる。すぐに離れたがそれでも間近で彼女は自らの唇を舐めて(その仕草の何と艶めかしいこと)顔を顰めてから笑った。
「にがいね」
唇に白い粉がついていた。
「プレジャーパウダー」加筆修正版。
きみはペットの設定は現代。ディオがご主人様でコルトがペットです。もろくそパロディです。
私が粉薬の中で一番苦いと思ったのは、市販の胃薬。あれ程嫌なモノはなかった、もう二度と飲まない、と誓った一年前。
きっとディオもそんな気持ちだな、とか思って書いた気がする。
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