43/日記料金所跡地

移転前跡地/思いつきの短編置き場

Il suono di un suoni di campana

*SANCTUARY 0.5/らいりとトウビとキュリィ
*年越しネタです


 宿に備え付けの冷蔵庫を開けて、ごそごそ中を探っているらいりを見付け、風呂上がりのトウビは首を傾げた。

「……何してんのらいり」
「や、蕎麦もうちょっとなかったかなーって」
「全部食っちゃったよ。らいり、四杯食って。おれ言ったよ、『今いっぱい食って後で食いたくなってもないぞ』って」
「そりゃそうだけどさあ……腹減ったんだもん」

 らいりの身体と冷蔵庫の隙間から茶を引っ張り出して蓋を開け、ぐうと飲む。もう慣れたけれど、この少女の食欲はとんでもない。何処にあれだけの量の食物が入るのか。

「あっそうだ! キュリィ、あんたのポケットの中から出たりしない?」
『あのねらいり。僕のポケットには何でも入るけど、それは何でも出てくるって意味じゃないよ。事前に入れておいたものしか出てこない。どこぞの漫画じゃないんだから』
「そうか……じゃあ我慢するか……」

 ベッドの上でくつろいでいるキュリィに言われ、らいりはため息をついて冷蔵庫を閉めた。明日になればまたご馳走が食べられるから、今は我慢。

「だって今日は幾らでも蕎麦食べられる日じゃないの。そんな日くらい、無限に蕎麦出してくれたって良いじゃない」
「……? え、何それ? 幾らでも蕎麦食える日? 年越し蕎麦ってそんなだった?」

 妙にねじ曲がった話に、トウビが眉を寄せる。それに今度はらいりも眉を寄せた。

「……違うの? 私ずっとそう思ってたんだけど」
「全然違うぞ! 何それ、何そのわんこ蕎麦大会! 年越しにわんこ蕎麦大会なんてしないって!」
「ええ!? 違うの!? だってちょっと、ええ!? お父さんもお母さんも、食べられるだけ食べて良いって言ったから、そういう行事だと思ってたのに!」
『……あの二人も言わないっていうのがおかしいんだよ、全くもう』

 正しい行事の理解は得られたが、心は寂しくなった。らいりはまたため息をついてベッドに転がった。

「ちぇー……じゃあ明日のお雑煮は七杯食うか」
「……そんなに餅あったっけ……」
『……ご主人に少し送って貰おうかな……』

 トウビとキュリィは目配せして目を細めた。新年を祝うと同時に、今年も度肝を抜かれる大食い劇が待っているようだ。



 その後、へきさに届いたキュリィからの伝言には、『らいりが暴れるのを防ぐ為に餅を十個くらい送って欲しい』という内容だったらしいが、へきさがそれを承諾したかは不明である。



只の保管ネタです。
へきさは腹黒だから、餅をちゃんと送ってないかも知れません。

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Author:橿倉いるあ
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